マレーシアカフェ事情の覚書き
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マレーシアのコーヒートレンドは急速に変化しています。
欧米植民地時代の政策のため、マレーシアではそれほど多くのコーヒー豆が生産されていません。当時マレーシアではゴムの木が、そしてインドネシアではコーヒーの木が栽培されていました。
現在マレーシアではゴムの木に代わり、アブラヤシの木が多く植えられています。
今回はクアラルンプールとイポーへ短期で行ってきましたので、現地のコーヒー事情を簡単にスケッチしてみたいと思います。
マレーシアのコーヒー業界には、大きく分けて3つの勢力があります。
1つ目は、外資系コーヒーチェーンです。クアラルンプール市内には、スターバックスやコスタコーヒーなど外資系のコーヒーチェーン店がたくさんあります。
彼らの店舗はほとんどのショッピングモール(世界的に有名な高級ブランド店の隣)にあり、店内にいる客は私のような観光客だけではありません。
現地の人にもしっかりとアピールできており、スタバのカップを片手に街歩きをする人も多く見られます。
2番目の勢力は、伝統的なコーヒースタイルです。
南香カフェに代表される、ミルクと砂糖を入れたコーヒーも現地の人々に愛されています。
ホーカー(マレーシア、シンガポールにある町中のフードコート)でも、朝のコーヒーと新聞を楽しむ人々の姿を見かけます。
私もこのスタイルが大好きです。
そして3番目の勢力は個人経営もしくは小規模経営のロースタリーカフェです。
スペシャルティコーヒーを愛する彼らは、店舗内またはカフェ近くの自社工場でコーヒー豆を焙煎しています。
その多くは団地や住宅街の中にお店があり、都市部からは車で15~20分程度離れています。
今日本で20年、30年続いているような老舗のロースタリーカフェも、このような住宅街の中に立地しているのが多く見られます。
そういった日本の老舗カフェは主に地元の常連客に愛されることで経営を続けています。
今から30 年後には、日本で起こったのと同じように、彼らのコーヒーに対する情熱や焙煎技術が他の都市へと広がりをみせるのでしょうか。
今後のマレーシアコーヒー業界で重要な役割を果たすと思われるのは、第二勢力である伝統的なスタイルのコーヒーです。
前述の通りマレーシアではコーヒーの木はほとんど植えられていないため、主に輸入した豆を使わなければなりませんでした。
また現在マレーシアではリベリカ種の栽培が進んでおり、豆のブランド化が行われています(エレファントコーヒーと呼ばれている)。
しかし、これらの豆は品質が劣ることが知られているため、マレーシアのコーヒーにおいては追加の焙煎プロセス(一度焙煎した豆を、パーム油マーガリンを加えて再度焙煎する)が行われることがあります。そして淹れたコーヒーにコンデンスミルクを加えます。これがホワイトコーヒーです。
マレーシアのコーヒートレンドの第一の勢力は、この習慣を引きついでいるように見えます
。
マーガリンを入れて豆を焙煎しているわけではなく、コーヒーにミルクと砂糖を入れて飲むという習慣です。
マレーシアのロースタリーカフェの多くは今はまだオーストラリアやアメリカのカフェ文化など世界的なコーヒーのトレンドに影響を受けているだけの状態に見えますが、高品質の豆を安定して輸入し焙煎技術をブラッシュアップすることができれば、マレーシアのロースタリーカフェはこれからますます成長発展していくと思われます。
その結果、伝統的なスタイルと別れて独自の路線を進むのか、それとも融合して新たにマレーシア独自の道を進むのか、今後も注視していきたいと思います。